翻訳が必要な文章で気を付けるべき9のポイント

翻訳が必要な文章で気を付けるべき9のポイント

翻訳する際にその元となる文章のことを「ソーステキスト(または原文)」と言います。たとえばある文章を日本語から英語に翻訳(英訳)する場合、日本語の文章がソーステキスト(または原文)になります。

翻訳は今行なっていることをなんらかのかたちで世界標準化(グローバライズ)や国際化(インターナショナライズ)、または現地化(ローカライズ)する際に必要となるものですが、それらを成功させるための重要な要素であるにもかかわらず見落とされがちなのが「ソーステキスト(または原文)の質(品質)」です。

ソーステキスト(または原文)は言うまでもなくあらゆる言語に翻訳された文章の元となるものであり、翻訳する言語の数が増えれば増えるほどその質が翻訳後に与える影響も大きくなります。よって翻訳に成果を求めるのであれば、まずはソーステキスト(または原文)の質を上げることが先決です。

本記事ではあらゆる言語にシームレスに翻訳展開するための、ソーステキスト(または原文)の作成方法についてご説明します。

文章は簡潔に

翻訳された文章の質と読者の理解度を高めるためには、ソーステキスト(または原文)はできるかぎり短く、できれば1文(句点で終わる文)あたり40文字以下を目安にしましょう。Microsoft Wordで文章を作成している場合はショートカットキー「Alt+T+W」ですぐに文字数を確認することができますが、デフォルトのフォントサイズ(10.5ポイント)の場合およそ一行が40文字ですので、思いのほか短いことがわかります。

ただし、できるかぎり短くと言っても単純に文章を小分けにすれば良いということではありません。どうすればもっとシンプルに伝えることができるか?どうすれば一度読んだだけで内容がスッと頭に入るようになるか、ときには音読を加えながら何度も読み直してブラッシュアップしましょう。

正確な語順で

日本語の語順は「S(主語)O(目的語)V(動詞)」が一般的ですが、それに付随する修飾語も含め、正しい文法構造と適切な句読点が施された文章を作成するようにしましょう。

翻訳の元となるソーステキスト(原文)は「SOV」という単純構造の短い文章ではなく多くの修飾語を加わえた長文であることがほとんどですが、その文法が破綻していたり「てにをは」の使い方を誤ったりしていると、翻訳の難易度は上がるとともに、翻訳の品質が低下する可能性が高くなります。

英語の語順が日本語のそれとは異なる「S(主語)V(動詞)O(目的語)」であることだけをとっても、翻訳が単純な言葉の置換作業ではないことをおわかりいただけると思いますが、「ソーステキスト(原文)の語順や文法についての誤りを指摘するのは本来翻訳者の仕事ではない」ことを念頭に、正確な語順で文章を作成するようにしましょう。

長い名詞を避ける

長い名詞とは「名詞文字列」つまり、複数の名詞が連なってひとつの名詞を形成しているものを指します。長大語の一種で「テロ対策特別措置法」「独立行政法人農業者年金基金法附則第六条第三項」「牛肉缶詰ラベリング作業監視業務委託法」等を例に挙げるとわかり易いかと思います。

※引用:Wikipedia

このように長い名詞の場合、読者はそれぞれの名詞の関係性を推測する羽目に陥るだけでなく、文章を理解するために何度も読み直すことを余儀なくされます。さらにそれが複数の言語に翻訳されるとなるといかがでしょうか。ソーステキスト(原文)の解釈を間違う、または誤った区切りでの単純な言語の置き換えとなってしまう可能性が一層高まることがおわかりいただけると思います。

よってソーステキスト(または原文)を作成する際は、長い名詞の文字列の使用はできるかぎり避けるようにしましょう。

用語を統一する

同じ対象を指したり同じ意味を成すにもかかわらず異なった用語(同義語)を使うと、文章としての明快さが失われるだけでなく翻訳品質の低下にもつながるため、用語は統一するようにしましょう。

用語が統一されていないと文章全体の一貫性に悪影響を与えるだけでなく、翻訳支援ツールを使用して翻訳する場合などは翻訳メモリの貢献度(翻訳品質の安定化、コストダウン、納期短縮など)が低下してしまいます。

裏を返せば、用語や表現の統一がきちんととれたソーステキスト(または原文)であれば、翻訳作業や翻訳コストそして、翻訳結果に良い影響を与えることができるため、ソーステキスト(または原文)を作成する際はかならず用語を統一するようにしましょう。

内輪ネタを避ける

独自の文化、歴史、背景に基づく表現や専門用語や方言、比喩といった、特定の対象にしか理解できない内容といった、いわゆる内輪ネタの使用は避けるようにしましょう。理解に必要な土台は万国共通ではないため、そのまま翻訳しても通じないだけでなく、苦労して翻訳しても等価性を維持することはほぼ不可能です。

もしどうしても内輪ネタを使用する必要がある場合は、ソーステキスト(または原文)を元にするのではなく、同じ評価を得られるまったく新しい文章に翻訳(表現)することをお勧めします。ただし、トランスクリエーションと呼ばれるこの作業は、言語の置き換えを主とした翻訳というよりも、キャッチコピーのクリエーションに近いものになるためコストは上がります。

よってソーステキスト(または原文)を作成する際は内輪ネタは避けるほうが無難でしょう。

数値に気を付ける

ソーステキスト(または原文)を作成する際は、日付、時刻、通貨や単位といった数値にも十分気を付ける必要があります。

言うまでもなく単位やその表記は国によって変わります。重量、距離(長さ、高さ)や気温などの違いについては一般的ですが、日付も数値(月日)の表記順が国によって異なることなどは忘れがちです。

これらは「どこの国」「どの言語」によって細かく変化するものであるため、本来スタイルガイドに基づきあらかじめ決めておく必要があるものですが、それが難しい場合は翻訳会社などに知恵を借りるのも手です。

尚、「重量や距離の換算(キロメートルをマイルにするなど)は本来翻訳者の仕事ではない」ことも念頭に、ソーステキスト(または原文)を作成する際はそこで使用する数値に気を付けるようにしましょう。

代名詞を避ける

代名詞は同じ内容を何度も繰り返さないように代わり使う名詞のことで、あなた、わたし、彼、彼女(複数形も含む)といった人称代名詞や、あれ、これ、それといった指示代名詞などがありますが、言うまでもなく「それが誰、何を指すのか」が曖昧になりがちなのでなるべく使用しないようにしましょう。

日本語はハイコンテクスト(文脈重視)、英語はローコンテクスト(言葉重視)であることはよく知られていますが、同じ文化、歴史背景や価値基準を持つ日本人同士であれば通じることや想像が容易いことであっても、異なる言語、異なる文化、歴史背景や価値基準を持つ国の人にとってはそうではありません。

代名詞は書き手の思惑と読者の想像力とその正確さに依存するところが大きいため、ソーステキスト(または原文)を作成する際はなるべく使用しないでおくことをお勧めします。

能動態を使う

  • 受動態)この文章は彼によって書かれた
  • 能動態)彼がこの文章を書いた

受動態と能動態の違いを改めてご説明する必要はないと思いますが、ソーステキスト(または原文)を作成する際はなるべく能動態を用いるようにしましょう。なぜなら、能動態を使うことで文章が明確かつ、直接的で自然なものになるからです。

もちろん時と場合によっては受動態を使ったほうがよいケースもあると思いますが、特にこだわりがない場合は能動態を使うほうが単刀直入でメッセージが伝わり易く、誤解を生む可能性を減らすことができます。

前述の代名詞同様、ソーステキスト(または原文)からは曖昧さや判断に迷うもの、翻訳の進行の妨げとなるものはできるだけ排除しておいたほうが良いので、ソーステキスト(または原文)を作成する際はなるべく能動態を使うことをお勧めします。

難解な言い回しを避ける

翻訳することを前提にしているのであればそのソーステキスト(または原文)はなるべくシンプルで誤解を生まないものが好ましいのはここまで述べてきたとおりですが、それらのことは強く意識しないとつい難解な言い回しを使ってしまいがちです。

慣用句や故事成語、難しいビジネス用語カタカナ語、業界の専門用語もその一種ですが、難解な言い回しでなければ伝わらない文章というものがほとんどないだけでなく、むしろそれらを使うことによってソーステキスト(または原文)の理解をより難しくしてしまう可能性すらあります。

難解な言い回しは往々にして読み手の理解を想定していない(気遣いが足りない)がために使用されてしまいがちですが、同じ言語を使う人同士であっても同じ知識レベルでなければ誤解につながるものです。

よってソーステキスト(または原文)を作成する際は「読み手が理解できるか、伝わるか」を念頭に、難解な言い回しを避けるようにしましょう。

まとめ

以上、「翻訳が必要な文章で気を付けるべき9のポイント」でしたがいかがでしたでしょうか。

グローバルメーカーが製造、世界中に販売する製品に付随するマニュアルや取扱説明書、チラシ、カタログといった一部のドキュメント(文書)を除き、「翻訳用の文章を書く」といったことはあまり身近ではないと思います。実際には「すでに作成済みの日本語の文章を外国語に(急に)翻訳することになった」というケースがほとんどだと思いますが、その場合でも翻訳を依頼するためにそのソーステキスト(または原文)を推敲しておくことを強くお勧めします。

翻訳を含め、異文化とのコミュニケーションにはある程度の勉強と練習そして、何よりも理解が必要です。読み手にとって理解し易い、伝わる翻訳をするにはまずソーステキスト(または原文)をよく見直すことです。洗練されたソーステキスト(または原文)は、翻訳者が翻訳の質を高めることに集中することを促すだけでなく、翻訳時間の短縮や翻訳コストの削減にもつながります。

目的に合った、成果につながる翻訳を得るためにもソーステキスト(または原文)の推敲は積極的に行なっていただければと思いますが、もしソーステキスト(または原文)でお悩みでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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