【外国語対応ノウハウコラム】翻訳を内製する5つのメリット/デメリット

翻訳を内製する5つのメリット/デメリット

目の前にあるドキュメント(文書)を翻訳する必要が生じた際、最初の選択肢は次の2つです。

  1. 自分で翻訳する
  2. 自分以外の誰かに翻訳を頼む(依頼する)

1の「自分(または、自社内)で行なう」ことを「内製」と言いますが、本記事では翻訳を内製する際の5つのメリット/デメリットについてご説明します。

メリット

コスト

翻訳を内製することの最大のメリットは、なんといっても「翻訳に掛かるコストを抑えることができる」ことです。

社内の人や知人、友人といった無償で翻訳してくれる人がいる場合は別ですが、自分以外の誰かに翻訳を依頼するとコストが発生します。翻訳者や翻訳会社に依頼する場合は「翻訳料金」という外注コストが発生しますが、翻訳を外注した際に発生するコストには最初に合意した「翻訳料金」だけではなく、次のようなものもあるのです。

  • 初期コスト(翻訳者または、翻訳会社が最初に見積もってきた翻訳料金=翻訳発注料金)
  • 追加コスト(原稿内容の修正や差し替えが発生した際に、翻訳の依頼先に翻訳し直しを頼む際に追加で必要となる翻訳料金)
  • 検収コスト(納品された翻訳の品質確認に必要な自分または、自社のランニングコスト)
  • 修正対応コスト(納品された翻訳の品質が思わしくなかった場合に必要な翻訳の修正依頼に自分または、自社内に発生するランニングコスト)
  • その他コスト(最初に翻訳を依頼した先の対応が思わしくなく、別の依頼先に頼んで新たに翻訳し直す場合に必要となる翻訳料金)

これら「目に見えるコスト」と「目に見えないコスト」を合算したものは想定よりずっと大きなものなのですが、翻訳を内製することで、(内製する際に掛かる時間(ランニング)コストを除き)これらのコストを抑えることができます。

セキュリティ

翻訳を内製することの2つめのメリットは、「高い情報セキュリティが保てる」ことです。

翻訳を依頼する際は当然、翻訳が必要なドキュメント(文書)を依頼先に渡す(見せる)、それも多くの場合社外に出す必要が生じます。秘密保持契約や機密保持契約によって翻訳の依頼先に高い情報セキュリティを求めても、自分または、自社以外の人間に開示する以上、どこで何が起こるかはわかりません。

また、翻訳が必要なドキュメント(文書)を電子ファイルなどで受け渡しする際には、悪意ある第三者によりその過程で情報が漏洩する可能性もあります。翻訳が必要なドキュメント(文書)が印刷したものなど紙媒体であっても、郵送、送付中に紛失するリスクがあります。さらに、翻訳を依頼した先が作業中に使用したデータが納品後も依頼先のサーバやハードディスクなどに残る(保存され続ける)可能性もあるでしょう。

しかし翻訳を内製することで、これら情報セキュリティに関する心配はほぼ無くすことができます。

※ただし、翻訳を内製すると言っても、Google翻訳やその他一般公開されている無料ツールをインターネット上で使用した場合は情報セキュリティが著しく低下します

コミュニケーション

翻訳を内製することの3つめのメリットは、「翻訳する際に必ず必要となる、コミュニケーションに掛かる時間やそれにまつわる問題を最低限に抑えることができる」ことです。

翻訳を自分以外の誰かに依頼する際は、翻訳する目的、翻訳に期待する成果など、自分だけが知っている情報を依頼先に提供する必要があります。十分な情報共有は品質の高い、良い翻訳を得るために必要不可欠だからです。

しかし依頼先に情報を提供するためには、必要な情報を収集したりまとめたりといった準備に一定の時間が掛かります。また、十分に情報を提供したと思っていても、依頼先によっては正しく理解できていなかったり「共有が十分でない」と考える可能性もあります。結果的に情報共有を繰り返し行なうことになりますが、そのことに掛かる時間や時間コストは決して少なくありません。

翻訳を内製することで、情報を外部に提供するためのコミュニケーションが不要になること、また、内製に必要な情報を収集するための(ほとんど場合社内)コミュニケーションに集中することができます。

ノウハウ

翻訳を内製することの4つめのメリットは、「翻訳を内製することで得るノウハウを、自分または、自社内に蓄積できる」ことです。翻訳を内製することで得る知識や経験を適切に蓄積できれば、それは、次の、または将来的に行なう翻訳に利活用できる貴重な資産になります。

過去に行なった翻訳の原文(翻訳の元となった原稿)と翻訳文(翻訳後の原稿)のペア(対にしたもの)を再利用、共有し易いように保管、管理したり、社内翻訳用の辞書とすべく対訳集(=用語集)を作成したりすることで、次の翻訳に掛かる時間(ランニング)コストを削減できるだけでなく、翻訳品質の安定化やさらなる向上が見込めます。

翻訳を内製することで、これらのような貴重なノウハウを蓄積することができるのです。

意識

翻訳を内製することの5つめのメリットは、「翻訳を内製することで得ることのできる国際感覚」です。

「国際感覚」は少し大袈裟な表現かもしれませんが、それまで触れることはおろか、意識することもなかった翻訳を内製すると、翻訳というもの自体に真剣に向き合うようになります。

  • なぜ翻訳する必要があるのか
  • このドキュメント(文書)を翻訳することで何を実現しようと思っているのか
  • それを実現するためには翻訳にどのようにあってほしいのか
  • 理想の翻訳を近づけるためにはどんな方法で、どのように翻訳すればいいのか

といったことを自ずと考えるようになりますが、その思考を通して翻訳したものを読んでもらう相手、つまり自分以外の国の人々や文化といった背景に思いを馳せるようになります。そしてそれが世界に視野を広げることとなり、グローバルビジネスを目論む企業やそこで働く人にとってもっとも大切な「異文化への理解」の醸成につながります。

よって、翻訳を内製することで、このような国際感覚を自然と身に付けることができるのです。

デメリット

時間

翻訳を内製することの最大のデメリットは、なんといっても「翻訳(すること)に時間が掛かる」ことです。日本語のドキュメント(文書)を英語に(英訳)する場合、プロ翻訳者は一日に3,000文字(原稿用紙にして約8枚)程度、英語のドキュメント(文書)を日本語に(和訳)する場合は1,500単語程度を翻訳できますが、それを本職としない人が同じ量を行なうのは簡単ではありません。

「外国語ができれば翻訳は容易い」と考えられがちですが、それは大きな間違いです。「外国語能力が高い」と一概に言っても、「読み書きをする場合」と「聞いたり話したりする場合」では必要な能力が異なるため、どちらかは得意だがどちらかは苦手という人がほとんどだと思います(余談ですが一般的に日本人は読み書きのほうが得意な傾向があります)。また、「読み書きをする場合」だけを例にとっても、「読むことは得意だが書くことは苦手」といった人も多いのです。

よって翻訳を内製することは、言うことは簡単でもその実行および実現(翻訳の完成)には想像よりもずっと時間が掛かることは間違いありません。

翻訳はある言語を別の言語にただ置き換えるだけの作業ではありません。翻訳が必要なドキュメント(文書)の文脈や趣旨を正しく理解した上で正確で美しく、なめらかで読み易い文章に想像力を発揮しながら仕上げるという、クリエーションであり、外国語能力が高いだけでは不十分なのです。

よって、翻訳を内製する際は思いのほか時間が掛かることを想定した上で、全体の計画を立案しておく必要があります。

人材

翻訳を内製することの2つめのデメリットは、「外国語能力の高い人材や、翻訳を専門または、集中的に行なう人材が必要になる」ことです。

大きな組織であれば帰国子女や海外赴任経験があるので外国語が堪能、といった人材を翻訳に充てることは可能かもしれませんが、少人数の企業でそれは簡単なことではありません。自社内に適切な人材がいない場合は新たに雇用する必要があるかもしれません。

また、自社内のあちこちで別々の人が不定期に翻訳を行なっていては、前述の「メリット」のひとつに挙げた「ノウハウの蓄積」につながらないので、自社内のどこかの誰かにある程度業務を集中させる必要が生じます。しかしこれも、そのような人材がいるか、そのような人材としてアサイン(任命)することが可能か、を考えると頭が痛いのではないでしょうか。

よって翻訳を内製する際は、それに適した人材がまず必要であることを覚悟する必要があります。

品質

翻訳を内製することの3つめのデメリットは、「翻訳する目的や期待する成果に相応な翻訳の品質を確保することが難しい」ことです。

前述のとおりただ言語置換することが翻訳ではないので、外国語が堪能な人が行なった翻訳がプロ翻訳者のそれを上回ることはほとんどありません(絶対にありません、と言いたいところですが、翻訳する必要があるドキュメント(文書)の内容や翻訳する目的、翻訳に期待する成果に応じた品質によっては、社内事情や社内用語に精通した、外国語が堪能な人が翻訳したほうが良い場合もあります)

プロ翻訳者は長い年月を掛けて翻訳の経験と実績を積み重ねながら腕を磨いてきた、それを生活の糧としているプロフェッショナルです。専門性の高い分野を得手とする翻訳者であればあるほど、毎日朝から晩まで特定の内容のドキュメント(文書)に没入しながら翻訳を行なっているわけです。

翻訳を内製する際にこのようなプロ翻訳者と同等の品質を求めるのが簡単でないことは簡単に想像できると思いますが、出来上がった翻訳に求められるものや品質への責任は誰が翻訳しても同じです。間違った翻訳や意図しなかった理解を促す翻訳が、のちの大問題につながった例は枚挙に暇がありません。

よって、翻訳を内製する際は、翻訳に求められる品質を担保できるかに加え、翻訳の品質によって生じる可能性のある事態に対して責任が持てるか、といった検討も必要になります。

悪影響

翻訳を内製することの4つめのデメリットは、「翻訳を内製することで他の業務に与える悪影響」です。

一般的な企業に於いて発生する翻訳という作業は、そのほとんどが主業務ではありません。別の言い方をすると、社員にはそれぞれ主とする業務があり、翻訳は付加、追加、不随とするに相応しい副業務でしかないのです。

ただでさえ主業務で忙しいなか、翻訳という追加業務にどれほどの時間を割くことができるか、またどれほど集中することができるか、どれほど丁寧に真剣に取り組むことができるでしょうか。大きな組織であれば専任担当者を設置する余裕があるかもしれませんが、小規模の会社では兼務、副業務とせざるを得ないのは間違いないでしょう。

また、外国語が堪能だからといって社内の翻訳を一手に引き受けることを望む人材がどれほどいるか、といったこともあります。その上、苦労して複数名を翻訳という業務に充てても、翻訳が必要なドキュメント(文書)の量がたとえば「キングファイル一冊分の厚みがあるマニュアル」ともなると簡単にキャパオーバーしてしまい、外注に頼らざるを得なくなるかもしれません。

よって、翻訳を内製する際は、主業務に悪影響を及ぼす可能性あることを忘れないようにする必要があります。

知見、ネットワーク

翻訳を内製することの5つめのデメリットは、「翻訳に関する知見やネットワークを活用することができない」ことです。

「餅は餅屋」と言いますが、翻訳者や翻訳会社は常に翻訳を行ない、翻訳のことばかり考えているので、翻訳に関する知見の蓄積量や翻訳に関するネットワークは膨大なものです。翻訳をする人にとって有益なこれら知見やネットワークは、翻訳を内製すると当然活用できません。

翻訳が必要なドキュメント(文書)の種類、それが属する産業分野、言語に加え、翻訳の方法や品質管理の仕方、それ以外にもさまざまな要素が翻訳には求められますが、言うまでもなくそのすべてを有しているのは翻訳者や翻訳会社です。また、ここ数年の技術進歩に伴なう機械翻訳の精度向上といった翻訳を取り巻くトレンドや最新情報をいち早く取り入れているのも翻訳者や翻訳会社です。

翻訳を内製すると自分または、自社内には相応のノウハウが蓄積されることは「メリット」でご説明したとおりですが、乱暴な言い方をすると残念ながらそれは「井の中の蛙」かもしれません。また、膨大な数の翻訳者というネットワークが活用できないことは、いつまで経っても少量の翻訳を処理することしかできないということです。

よって、翻訳を内製する際は、「小さなキャパシティのまま、自助努力により長期的に知見を蓄積することになる」ことを理解しておく必要があります。

まとめ

以上、「翻訳を内製する5つのメリット/デメリット」でしたがいかがでしたでしょうか。

本記事は、「翻訳を内製すること」や「翻訳者や翻訳会社へ翻訳を外注すること」のいずれかを推奨するものではありません。なぜなら当社は、「翻訳の内製と外注のいずれが最適かはケースバイケース」と考えるからです。大切なのは、「翻訳する目的と翻訳に期待する成果を元に、内製と外注を使い分ける」ことです。

とは言え、「内製と外注のいずれが最適か判断が付かない」「予算的にはもちろん内製だが…」といったご状況におられる方がほとんどだと思いますので、そのようなときは厚かましくさまざまな翻訳会社に問い合わせ、相談してみてください。

回答はそれぞれ少しずつ異なるかもしれませんが、翻訳に真剣に取り組んでいる翻訳会社であれば、自社への発注の有る無しにかかわらず、相談者にとって最適、最善な方法を提案してくれるはずです。また、いずれ翻訳を外注する必要が生じた場合は、「問い合わせ、相談したときの対応がもっとも良かった翻訳会社」に依頼すればおそらく、大きな失敗は避けることができるでしょう。

翻訳の内製についてお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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