翻訳の依頼先5つの見分け方と使い分け方

翻訳の依頼先5つの見分け方と使い分け方翻訳が必要な機会が突然訪れ、「自分ひとりでは手に負えないので、自分以外の誰かに翻訳を依頼する」と決めても、その先は決して平坦たんな道のりではありません。

別記事「翻訳会社を利用する5つのメリット/デメリット」では翻訳会社に依頼する場合の「品質、料金、納期、情報、利便性」それぞれのメリットとデメリットについてご説明しましたが、一概に翻訳の依頼先と言っても規模や得意とする分野、体制など実にさまざまです。

そこで今回は「翻訳の依頼先(候補)としてどのような候補があるのか」、その種類や規模、特徴などについてご説明します。

外資系グローバル翻訳会社(巨大企業)

まず最初に挙げるべきは、世界中に拠点を有し、翻訳業界では最大の事業規模を誇る「グローバルな外資系翻訳会社」です。LSP(Language Service Provider:ランゲージサービスプロバイダー)または、MLV(Multi Language Vendor:マルチランゲージベンダー)と業界では呼ばれています。

島国である日本と異なり、他国と地続きの諸外国に於いては、言語転換や複数言語の同時利用が古くから活発であったため、翻訳事業の歴史は長く、そこで発祥、成長した外資系の翻訳会社が世界規模に成長したことは当然かもしれません。

代表的な外資系翻訳会社には次のようなものがあります。

世界順位 企業名 本社所在地 2020年収益(売上)
1位 TransPerfect アメリカ 約1,000億円
2位 Lionbridge アメリカ 約890億円
3位 LanguageLine Solutions アメリカ 約740億円
4位 SDL イギリス 約580億円
5位 RWS イギリス 約550億円

※引用元:THE NIMDZI 100 THE 2021 RANKING OF THE LARGEST LANGUAGE SERVICE PROVIDERS IN THE WORLD

日本の翻訳会社としての最上位は株式会社翻訳センターで19位(約130億円)です。

グローバルな外資系翻訳会社は、彼らの規模をはるかに上回る規模の外資系グローバル大企業(ソフトウェア、自動車その他メーカー、法律事務所など)を顧客に持ち、その取引規模の大きさが(翻訳業界では巨大と言える)売上規模を誇る理由です。

言うまでもなくグローバルな外資系翻訳会社は世界中の言語(の翻訳)に対応しており、先進的な翻訳技術に精通しているだけでなく、その技術進歩発展の一翼を担っています。好例として、世界第4位のSDL社は「Trados Studio」という翻訳支援ツール(ソフトウェア)を開発、世界中に販売しており、日本も含む世界中の翻訳者、翻訳会社が利用しています。

その事業規模の大きさからグローバルな外資系翻訳会社を除外するわけにはいかず紹介しましたが、「翻訳が必要な機会が突然訪れた人が翻訳の依頼先(候補)として検討するには少々敷居が高い」と言えます。なぜならグローバルな外資系翻訳会社との取引には、かなりまとまった量の翻訳を、定期的に依頼する必要があるからです。

グローバルな外資系翻訳会社はもちろん日本にも支社、支店、オフィスを有していますが、そのほとんどは別の国にある同じグループから依頼される、日本語の絡む翻訳(和訳)を主に取り扱っています。

そしてこの日本語の絡む翻訳(和訳)のほとんどに、日系翻訳会社を下請けとして利用することで対応しています。つまり、翻訳が必要な機会が突然訪れた人が、「翻訳の依頼先としてグローバルな外資系翻訳会社(の日本支社)を選ぼうとしても、取引ができない可能性が高い」のです。

また、取引ができたところでグローバルな外資系翻訳会社(の日本支社)は下請けである日系翻訳会社に業務を委託するので、「それなら初めから日系翻訳会社に直接依頼しておいたほうが良い」ということになるのです。

「受託した翻訳業務を下請けの翻訳会社に再委託する」というのはグローバルな外資系翻訳会社の日本支社、支店だけの特徴ではなく世界的な構造であり、当社にも米国その他の国々(のグローバルな外資系翻訳会社の現地支社、支店)から直接、業務委託の打診が定期的に来ています。

※当社は「適正価格による品質維持」の観点から、グローバルな外資系翻訳会社をはじめ、同業他社の下請けは行なっておりません

日系翻訳会社(大手)

次に「翻訳の依頼先(候補)」として挙げるのは、比較的「規模の大きな日系翻訳会社」です。

日本国内にあると言われる翻訳会社の数は2,000社とも3,000社とも言われていますが定かではありません。また、「日本 翻訳ビジネス・その他語学周辺ビジネス 市場規模[分野別](億円, 2018)」によれば日本国内の翻訳市場規模は3,000億円程度と言われいます。

3,000億円程度で3,000社、つまり単純計算で「1社あたり売上高1億円」が平均的な翻訳会社の事業規模なのです。そのようななかで大手に分類されるのはほんのわずかです。おそらく先述の「翻訳センター」を筆頭に20社程度ではないでしょうか。

大手日系翻訳会社のなかで上場しているのはほんの一握りであるため各社の正確な事業規模はわかりませんが、「年間売上高10億円」あたりから業界での存在感や業界団体に於ける発言力が増し、周囲から自然に「大手」と認識され始めるように思います。

大手日系翻訳会社のほとんどは多言語対応ですが、なかには対応可能な「言語」や「分野」を特化して専門性を高めているところもあります。いずれも相応の数の翻訳者をリソース(社員ではなく業務委託先)として保有(取引契約)し、翻訳が必要な依頼主(お客様)と仲介することで収益を上げています。

また、経営層を除く社内の構成は、

  • 営業
  • 制作(プロジェクトマネージャー、コーディネーター、チェッカー、QA、DTPスタッフ、など)
  • バックオフィス(経理、労務など)

 

であることがほとんどですが、機械翻訳やITに力を入れている大手日系翻訳会社にはエンジニアやプログラマーが在籍していると思われます。

尚、大手日系翻訳会社でも「社員規模は数十~二、三百名程度」であることがほとんどですので、営業はフィールドセールスが主であり、インサイドセールスやリピート(顧客)対応は制作部門に所属するコーディネーターが行なうことも多いと思われます。また、マーケティング活動などはバックオフィス部門の管轄となっているのではないでしょうか。

大手日系翻訳会社に翻訳を依頼するメリットやデメリットは、それぞれ次のようなものです。

メリット
  • 実績(依頼主はその経験値を享受できる)
  • キャパシティ(大量短納期案件も任せることができる)
  • 信用力(ブランドを維持するために、いい加減な対応はしない)
デメリット
  • 料金(組織を維持するために「発注最低料金」など全体的に高めに推移する)
  • 納期(一定工数掛かるため小規模短納期には弱い)
  • 柔軟性(仕組みから外れる対応をしてもらえない)

 

翻訳業界に於いては大手に分類されるこれらの日系翻訳会社ですが、産業全体でみた場合そのほとんどは中小企業規模に過ぎません。

よって他の業界からすれば「十分機動力があり、対応に柔軟性もある」と映ることもあると思いますが、より高い専門性や使い勝手の良さを求めるのであれば、大手ではなく中小規模の日系翻訳会社とじっくり取り組むことも検討に値すると思われます。

日系翻訳会社(中小)

次に「翻訳の依頼先(候補)」として挙げるのは、「中、小規模の日系翻訳会社」です。日本国内に2,000社あるとも3,000社あるとも言われる翻訳会社のほとんどが、この中小日系翻訳会社です。

翻訳者数名が集まって法人化したような小規模事業者も含め、「社員規模は2、3名から、多くとも20名程度」の翻訳会社は、翻訳業界でも中小規模に分類されます。

多言語対応力やキャパシティを強みとする大手日系翻訳会社と差別化を図るため、専門分野を設定したり対応言語を特化している翻訳会社が多いのもその特徴のひとつですが、具体的には次のとおりです。

専門分野(例)
  • 医療医薬関連ドキュメント(文書)専門
  • 特許書類専門
  • 医学論文専門など
言語特化(例)
  • 英語のみ対応
  • 中国語のみ対応
  • ドイツ語のみ対応など

 

尚、中小日系翻訳会社に翻訳を依頼するメリットやデメリットは次のとおりです。

メリット
  • 料金(固定費が低いため、柔軟に対応してくれる可能性がある)
  • 納期(小回りが利くため、深夜、早朝、週末や休日なども臨機応変に対応してくれる)
  • 利便性(継続的な取引を行なうことで、依頼主の秘書のような対応が期待できる)
デメリット
  • 信用力(安値を売りにする翻訳会社もあるため、依頼先によっては失敗する可能性がある)
  • キャパシティ(翻訳者不足により繁忙期などの対応が難しくなることがある)
  • 実績(専門・特化型であるため、それ以外についての経験が享受できない可能性がある)

 

大手日系翻訳会社と中小日系翻訳会社の違いはたとえると、チェーン店と個店のようなものです。

「均一化されたサービス」「一定以上が保証される品質」「高低いずれにも極端でない料金体系」などは大手日系翻訳会社に優位性があり、「個別サービス」や「職人技」を求めるのであれば中小日系翻訳会社、といった使い分けが良いと思います。

個人事業主(翻訳者)

次に「翻訳の依頼先(候補)」として挙げるのは、数名以上の組織に属さず、個人(フリーランス)として翻訳対応が可能な「翻訳者」です。

日本市場で流通する翻訳言語(英語、中国語ほか)の翻訳対応が可能な日本人、日本人以外の国籍の翻訳者は、日本国内にかぎらず世界中にいるので、その正確な人数を求めることはほとんど不可能です。

また、翻訳者には個人(フリーランス)として主に自宅(または個人事務所)で業務を行なっている人もいれば、翻訳業務受託先の企業まで出向いて(内勤で)翻訳を行なっている人もいます

これら翻訳者に直接依頼することができれば、大手、中小の別なく翻訳会社が仲介しない分、翻訳コストが下がるのは間違いありません。しかしながらそのようなケースは稀なようです。そこには、次のような理由があると思われます。

翻訳者に直接依頼しない(できない)理由

依頼主の目から見た場合
  • 個人(フリーランス)の翻訳者を見つけることができない
  • 発注先としての信用性に欠けるため、社内稟議が通らない
  • キャパシティがすぐにいっぱいになる
  • 翻訳者一名一名への個別対応が必要なため、(依頼主の)手間がかかる
  • 当たり外れによるリスクが大きい
翻訳者の目から見た場合
  • 取引開始まで敷居が高い
  • 依頼主の担当者に直接対応するのが大変である
  • 大きめの案件を打診されても対応できない
  • 依頼主に振り回される可能性がある
  • 仲介業者である翻訳会社の助力に期待することができない

 

ただし、これら互いの問題さえクリアできれば、依頼主から翻訳者に翻訳を直接的に依頼することにはたくさんのメリットがあると考えます。

尚、仲介業者である翻訳会社は、依頼主と翻訳者の直接取引では得ることのできない、自社が介在するメリットを依頼主と翻訳者の双方に供与することで、直接的依頼と間接的依頼それぞれの利点を最大化する、というのが理想的なかたちでしょう。

余談ですが、詳しい翻訳者情報を聴取した挙句、自社専属の翻訳者にし(リソースに加え)てしまおうとする(翻訳の)依頼主が稀におられますが、このような行為は信義以前に早計ですので止めておいたほうが良いと思います。

なぜなら、せっかく自社専属にしても翻訳者との関係構築が上手くいかなければ、翻訳の品質を維持したままのコストダウンにつながらないからです。そもそも翻訳者情報は個人情報ですので翻訳会社が開示することはまずありませんが、そのような情報を欲しいと考える人(依頼主)と与えてしまう人(翻訳会社)と、それに従って動いてしまう人(翻訳者)のあいだで、良いもの生み出すことは難しいと考えます。

その他(翻訳マッチングサービス)

ここまで「グローバルな外資系翻訳会社」「大手日系翻訳会社」「中小日系翻訳会社」「個人翻訳者」と辿ってきた「翻訳の依頼先(候補)」ですが、最後にご紹介するのは十年ほど前から現れた「翻訳マッチグサービス」です。

ランサーズ、クラウドワークス、ココナラのように「クラウドソーシングで(翻訳ができる人に)直接翻訳を依頼できる」サービスとお考えいただければと思います。ランサーズ、クラウドワークス、ココナラでも翻訳依頼は可能ですが、翻訳に特化した、翻訳サービス提供者(翻訳会社、IT系ランゲージベンダーなど)によるクラウドマッチングサービスとして次のようなものがあります。

翻訳依頼も可能な総合型クラウドソーシングサービス
翻訳サービス提供者による翻訳専門型マッチングサービス

 

総合型、専門型と分けましたが、両者とも「オンラインで簡単に、安価に、24時間365日、翻訳が依頼できる」ことがその最大の特長です。

総合型は

  • まず提示価格を見ながら依頼先の選定を行なう
  • その後取引条件の調整を行なう

 

というフローですが、

専門型は

  • 最初から「翻訳の単位当たり料金」が決まっている
  • 翻訳を依頼したい人がサービスサイトの画面上にテキストを入力(またはコピペ)する
  • そのテキスト量によってすぐにその場で翻訳料金が表示される
  • 依頼主が発注を決定すると、登録翻訳者が早い者順で翻訳対応する

 

というフローです。

尚、総合型と専門型の違いは次のようなものです。

翻訳依頼も可能な総合型クラウドソーシングサービス
  • 翻訳にかぎらず、多種多様なサービス提供者が登録している
  • 翻訳を依頼される者として登録するためのハードルが低い(専門型より品質が低下する可能性がある)
  • 時間当たりの料金体系のため、翻訳ボリューム(文字数または、単語数)によっては専門型より安価で済む可能性がある
翻訳依頼に特化している翻訳専門型マッチングサービス
  • 翻訳サービスに特化している
  • 翻訳者として登録されるためにテストに合格する必要がある(総合型より品質が向上する可能性がある)
  • 翻訳ボリューム(文字数または、単語数)による完全従量制なので、少量の場合は安価で済む

 

上記以外にも両者の違いは多々ありますが、リスクとして共通するのは、「翻訳会社(またはプロ翻訳者)に依頼した場合よりも低品質になる可能性が高い」ということです。

これはその仕組みによって「どのような実力を持つ人が翻訳するかわからない」「翻訳したものを第三者がチェックする工程がない」ことを考えれば当然であり、翻訳料金とのトレードオフ(品質を犠牲にすることでコストを下げている)により実現されているサービスですので、翻訳を依頼する側の理解が必要です。

「早い、安い、そこそこ(の品質)」とその利便性こそがこのサービスの特長でありメリットなので、品質要求の低い、たとえば平易な内容のビジネスメールやSNSへの投稿記事など、翻訳の品質があとで大きな問題につながらない案件に使うといった知恵が必要です。

まとめ

以上が「翻訳の依頼先5つの見分け方と使い分け方」でしたがいかがでしたでしょうか。

最後にひとつ、どうか気を付けていただきた依頼先(候補)を2つお伝えします。

  1. 翻訳を専門としていない事業者(HPに「翻訳も可能です」といった文言や、事業内容の劣後に「翻訳」が含まれている事業者
  2. 一括見積依頼サービス(または見積比較サービス)

 

いずれも翻訳サービスを本業としていないため、翻訳依頼があると翻訳会社や翻訳会社に再委託(下請けに出)することになるのですが、これは翻訳品質の低下に直結します。なぜなら、中抜きによって本来翻訳者に支払われるべきコストが絞られるからです。

翻訳は労働集約型産業であるため、コストダウンは簡単ではありません。よってもし厳しい翻訳料金で受託するには、翻訳工程を削るなどして翻訳の品質を天秤にかけるほかないのです。

翻訳依頼先の見分け方や使い分け方でお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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